星降る夜のキャンドルナイト

 

いわき市の建築家、豊田善幸が呼びかけている古民家保存活動「中之作プロジェクト」が本格的に始動したいわき市中之作の古民家で、3月4日、キャンドルライトイベントが行われた。震災から1年。大勢の人たちが集まる中、復興へ歩み出した中之作に、柔らかな希望の光が灯った。

text & photo by Riken KOMATSU

 

このイベントは、全国各地でキャンドルイベントを主催しながら、ガラスホルダー制作などのワークショップを開催している「ひとてとひプロジェクト」が主催して行われたもの。築200年の古民家「中之作の家」を会場に一夜限りのキャンドルナイトとなった。

 

古民家にしつらえられた棚や階段には、美しくキャンドルが並べられ、その柔らかな光は、改修工事を待つ古民家の室内を温かく照らし、神聖な雰囲気を作り上げていた。参加した人も、ワークショップでホルダーを制作したり、ぼんやりと炎を眺めたりと、思い思いにキャンドルを満喫したようだ。

 

間もなく震災から1年。津波で大きな傷を受けた中之作だが、昔ながらの古民家を守ろうという中之作プロジェクトも始まり、少しずつ新たな気持ちで前に進み出そうとしている。この日も、参加者の多くは近隣から集まった人たちだった。新しい中之作のシンボルを前に復興への思いを新たにしたに違いない。

 

会場となった中之作の家は、現在、いわき市鹿島の建築家、豊田善幸が立ち上げた「中之作プロジェクト」によって保存活動が進められている。キッチン付きのレンタル古民家として利用されることになっており、建物の名前も「清航館(せいこうかん)」と決まったところだ。今後は、屋根瓦や外壁などの具体的な修繕が始まる予定だ。

 

復旧工事が進む中之作の町には、少しずつ新しい建物が増えている。100年以上の歴史を持つ古民家も何軒かはすでに解体されてしまった。古き良き港町の風景は、少しずつ変化しつつあるようだ。しかし、仮に、かつての町並みが失われたとしても、この清航館が中之作の暮らしぶりを未来に伝えるためのシンボルになるに違いない。

 

清航館では、震災1年を迎える3月11日にも写真展が開催される予定になっている。中之作から文化を発信していく試みは、今後ますます活発になりそうだ。

 

古民家の入り口まで、キャンドルの列が続く。
古民家の入り口まで、キャンドルの列が続く。
日本の伝統建築の技術が集約された古民家。その棚に、美しくキャンドルが並ぶ。
日本の伝統建築の技術が集約された古民家。その棚に、美しくキャンドルが並ぶ。
ただぼんやりと光を眺めるだけで、何かが溶け出すような不思議な充足感が得られる。
ただぼんやりと光を眺めるだけで、何かが溶け出すような不思議な充足感が得られる。
ガラスホルダーがさまざまに光を反射し、柔らかな空間を作り上げている。
ガラスホルダーがさまざまに光を反射し、柔らかな空間を作り上げている。

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