ビルに描く弔いの壁画、オクリエ

 

故人のご遺体に化粧を施すことで、在りし日の姿に思いを馳せ、天国へ送り出そうという「送り化粧」を、被災した建物にもしてあげることはできないだろうか。在京のライブペインター、ナカジマシゲタカの発案により企画されたオクリエ。絵で、その建物の最後の瞬間を彩り、弔い、壊されてしまうその瞬間までの時間を共有しようというアートプロジェクトである。

 

小名浜港のそばに、鯨岡肉店と書かれた白く大きなビルがある。視線の開けたベイエリアで独特の存在感を示していたそのビルは、311で大津波に巻き込まれ、大きく損壊してしまった。ナカジマシゲタカと、小名浜在住のドローイングアーティストたんようすけの2人が、今回、この鯨岡肉店の社屋ビルに絵を描くという壮大なプロジェクトに挑む。

 

制作にあたっては、このビルを住居としても使っていた鯨岡さん家族へも聞き取りを行い、モチーフなどの企画内容が練られてきた。そして、小名浜港がかつて「小名浜海岸」と呼ばれていた頃、沿岸に美しい松林があったこと、新しい命の芽吹きのイメージなどから着想を得、ビルの壁面には松の木をモチーフにした壁画が描かれることになった。

 

 

会場であり制作のためのキャンバスとなる、小名浜辰巳町鯨岡肉店ビル。

 

今回アーティストとして参加するナカジマシゲタカ、たんようすけの2人は、普段はそれぞれ建築設計の仕事に携わっている。東北の被災地で日常の景色となってしまった、破壊された建造物。そこには何十年という歴史があったはずなのに、何の弔いもなく葬られていってしまうという事実。そこに、2人とも複雑な思いを抱いていたという。今回の企画は、「建築」の仕事に携わる2人だからこそのアートプロジェクトと言うことができそうだ。

 

制作はすべて公開で行われる予定だ。7月16日から18日にかけての天気予報は晴れときどき曇り。雨の確率はいずれも20〜30%。海の日に描く、港町小名浜の風景。被災地と「アート」の力で再定義していこうという壮大なテーマが背景にあるだけに、雨で順延とならぬことを祈るばかりだ。

 

 

送り化粧「オクリエ」

日程:7月16日(土)、17日(日)、18日(月)

参加アーティスト:

ナカジマシゲタカ(Butterfly Under Flaps.)

たんようすけ(からみほぐし研究所)

主催:UDOK.   協力:有限会社トライアート