2012年

5月

21日

小名浜に木の復興住宅が建てられています

 

いわき市の風土にあった家づくりを提案している「いわき家ナビ」が、「木の復興住宅」という事業をスタートさせ、その1軒目となる住宅で構造見学会が開かれた。被災された方の住まいと、新しいいわきの景観を作る住宅、その両方の顔を持つ「ポスト311」の住宅の姿が、少しずつあらわになってきた。 

text by Riken KOMATSU

 

いわき市小名浜。本町通りと大原街道がぶつかる交差点のそばに、その家はある。およそ30坪。平屋のこの新しい住宅が「木の復興住宅」第1弾だ。施主は一人暮らしのおばあさん。25坪の住居スペースに加え、5坪の塾ができる。完成はおよそ1ヶ月後。今から完成が楽しみで仕方がない。

 

最大の特徴は、木をふんだんに使っていながら野暮ったくならず、清潔感を保っているところ。あらわしとなっている杉材は、薄く白の塗料を塗って拭き落とされているので、スタイリッシュに木の雰囲気を出している。杉の柱は重すぎず、しかし確かな存在感を残しており、空間を優しく引き締めているのが印象的だ。

 

構造は金具を使わず木組みで作られており、連結部分の仕口は、すべて手刻みで仕上げられているというから驚きだ。伝統の技術を継承した若い大工が、技術だけでなく自らのクリエイティブな感性をあちこちに表現している。無垢のナラを使った枠やフローリングも暖かみのある空間を作り出しており、被災された方が安心して暮らせる工夫があちこちに見られる。

 

完成まで1ヶ月。どのような暮らしがここで営まれるのだろう。
完成まで1ヶ月。どのような暮らしがここで営まれるのだろう。
ナラの無垢材を使った床。裸足で踏みしめたい。
ナラの無垢材を使った床。裸足で踏みしめたい。
大工さんが制作した椅子。シンプルで美しいフォルムは木の家に似合う。
大工さんが制作した椅子。シンプルで美しいフォルムは木の家に似合う。

 

「木の復興住宅」というだけあり、木材をふんだんに使っているが、間伐材や節あり材などを適材適所に組み合わせ、既存のサイズのものを使用することで、コストを抑えることに成功している。坪単価は50万円(諸費用別、外構含まず)。もちろん、耐震・断熱などの基本性能は確保しつつ、コンパクトながら使いやすく開放感のある空間を目指している。

 

また、「浜通りの家」というコンセプトのとおり、福島県浜通り地方特有の気候や風土を考え、夏と冬の温度のバランスを考えた設計となっている。太陽光発電、太陽光温水器、ペレットストーブなどにも対応するなど、環境負荷を抑えた「ポスト311」にふさわしい家づくりが可能だ。被災された方の新しい住処に、ふさわしい住宅となっている。

 

いわき家ナビを主宰する大平祐子さんは、「とりあえずの間に合わせではなく、この街で新しい暮らしを始めるのにふさわしい家をずっと考えてきました。人の復興が街の復興になるよう、永く安心して暮らせる木の家がいわきに増えていけばいいですね」と希望を語ってくれた。いわき家ナビが届けようとしているのは、誰のものでもない「我が家」だ。


背割りの入った杉の柱。木が支える住宅は、住む人に安心を与えてくれる。
背割りの入った杉の柱。木が支える住宅は、住む人に安心を与えてくれる。
通りに面した平屋の住宅。天井が高く取ってあり、想像以上に広々とした空間になっている。
通りに面した平屋の住宅。天井が高く取ってあり、想像以上に広々とした空間になっている。


施主となる一人暮らしのおばあさんは、大工との交流を毎日楽しみにしているそうだ。大工が作りたい家、おばあさんが住みたい家、理想を語り合いながら、この家は完成に近づいていくのだろう。さまざまな人たちの思いが、この家には込められている。それは、この家のコンセプトにも繋がる。家のナカとソトが自然に繋がり、コミュニケ―ションが生まれるような家。この家は、新しい町での新しい暮らしに、新しいつながりを加えてくれそうだ。

 

そして、景観。震災以降、新たな住宅があちこちにでき、街の景観は少しずつ変わろうとしている。しかし、全国どこにでもあるような景色ではなく、これからの小名浜を形作る町並みが生まれて欲しい。周りの景観にとけ込み、新たな歴史の一部となっていく。これから家づくりを考えている方、ぜひ「木の復興住宅」を考えてみてはいかがだろうか。安心して暮らせる木の家が、美しい小名浜の景観の一部になる。そんな家に、1人でも多くの人に住んでもらいたい。

 


information

いわき家ナビ

http://www.i-ienavi.com/

 

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