南相馬、双葉、東西南北

 

原発事故の影響で避難を余儀なくされている、双葉、南相馬のDJ、MC、クリエイターらが参加する音楽イベント「東西南北」が、10月29日土曜日、いわき市平の満月堂で開かれる。地元双葉郡夜ノ森で被災し、現在は小名浜に在住する、オーガナイザーでありDJのATOMICに、イベントについて話を聞いた。

text & photo by Riken KOMATSU

 

東日本大震災以前より、双葉、南相馬を拠点に県内外で活動していたDJ、MCたち。原発事故によって散り散りになったはしまったが、今ようやく一堂に会してイベントが開催されることになった。タイトルは、東西南北。「日本全国、東西南北、面白いヤツらはいる。別に都会とか地方とかじゃなく、いろいろなところで活動してる人たちを知ってもらいたいと思って、このタイトルをつけました」と、オーガナイザーのATOMIC。

 

イベントでは、ゲストとして迎えられる双葉町出身のDJ JUNKを筆頭に、楢葉出身のライブペインターYUKI UENO、南相馬市鹿島出身のMC DUM DA MADらがパフォーマンスを行うことになっている。出演する全員が、アンダーグラウンドヒップホップの影響が強いと言われる相双地区出身だけに、彼らにしか表現するのことできないリアルな地下世界を作り上げてくれるに違いない。

 

DJ JUNKのパフォーマンスには「FUKUSHIMA! 今この土地で発信できること」というタイトルが掲げられている。原発事故の影響で故郷を汚され、ふるさととバラバラに引き裂かれてしまった彼らの叫びとは、いったいいかなるものなのだろうか。「原発事故でずっと音楽をやる場所を失っていたけど、避難しているこのいわきから、全国に向かって発信できることがたくさんあるんじゃないか」とATOMICはいう。彼らの叫びを、ぜひ現場で感じてもらいたい。

 

オーガナイザーのATOMIC。彼らにしか表現することのできない音がある。
オーガナイザーのATOMIC。彼らにしか表現することのできない音がある。

 

オーガナイザーのATOMICは、現在は、原発事故の影響で小名浜に避難している。いわき市内の復旧作業にあたるなどして収入を得ながら仲間たちと連絡を取り合い、イベントの開催に向けてパフォーマンスに磨きをかける日々だ。そんな中、偶然、小名浜にアトリエを構えるデザイン事務所「からみほぐし研究所」を知り、小名浜と接続。今回のコラボレーションとなった。

 

からみほぐし研究所所長のたんようすけは言う。「フライヤーのデザイン作業を進めるほど、ATOMICが語る言葉がどんどん増えてきて、こんなにもこのイベントに対する熱意があるのかと正直驚きました。東西南北の字は筆字書きなんですが、フォントでは表しきれないものを出さなければという一心でした」。被災の状況は大きく違えど、同じ福島県浜通りに住む人間だからこそ、その思いもひとしおだ。

 

イベント当日は、ハロウィンの週末。市内でもたくさんクラブイベントが開かれるが、「音楽が好きな人だけが来てくれればいいくらいの気持ちでいます」とATOMIC。硬派で黒い音楽が、満月堂を彩りそうだ。これまでは、被災地、原発立地区域としてしか取り上げられなかった相双地区だが、そこで生まれてきたカルチャーがいかなるものかを目に焼き付けるとともに、その声なき声を、刻み付けて欲しい。

 

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