車で二時間の楽園

Re:write vol.18 / text & photo by hzk

 

『車で二時間の楽園』。

 

それが私にとっての小名浜。

いつも裏切らないで、其処に在る場所。

 

気が向けば、カメラと釣り道具を積んで車を走らせた。

朝でも昼でも、夜中でも関係なかった。

移動中の車の中、大声で歌うのが好きだった。

 

震災前、最後に足を運んだのは、偶然にもサンシャインマラソンの日。

教えてもらったカフェに行きたくて、友人を誘い、

思いつきで向かったものだから、すっかり忘れていた。

 

交通規制が解けるまでと思い、小名浜の街中へ。

何時もお世話になっている釣り具屋さんへ、今年最初のご挨拶。

相変わらずの笑顔に、『帰ってきたー』という感覚が沸く。

 

サンマリーナに向かうのを諦め、江名に向かう。

海に向かってひたすらシャッターを切った後、よく釣りをする久ノ浜に立ち寄る。

いつもの景色が其処にあって、沢山の笑顔や優しさ、想い出が蘇ってきてにやける。

初めて一緒に来た友達を前に、小名浜の魅力を熱く語っている自分に気づく。

 

交通規制が解け、いざ。

目的のカフェは、三崎公園のすぐそば。

待ちくたびれて、お腹はぺこぺこ。

今日撮った写真を見ながらワッフルまでしっかり堪能。

 

絶対またすぐ来る、そう思いながらお店を後にし、

折角だから、と、マリンタワーへ。

 

何度も小名浜には来ているのに、マリンタワーは初体験。

ものすごく風が強くて怖かったけれど、一番上まで。

其処からは、大好きな場所が一望できた。

何時も触れる景色とは違って見えて、またひたすらにシャッターを切った。

 

帰り際、最後にと、永崎海岸に立ち寄る。 

満ち引きする波と戯れ、子どものようにはしゃぐ。

そしてまた、沢山の写真を撮った。 

ただの偶然にすぎないかもしれないけれど、今までの思い出の場所を総括するような一日だった。 

 

あぁ、こうやって書きながら、思う。

私は此の場所に甘えてばっかりだった。

いつも裏切らないで、其処に在る場所を、

何時までも裏切らないで、其処に在り続ける場所だと、

いつの間にか思い込んでいたのかもしれない。

 

いつも笑顔で迎えてくれる釣り具屋の御夫婦。

私たちが釣れないようなおっきなお魚を、

お土産用に準備して待っていてくれていたおじちゃん。

小名浜の海が好きになり過ぎて移住してきたおじちゃん。

困った時に電話一本で飛んできてくれる頼れるお兄ちゃん。

 

海辺で出会った女同士、意気投合して語り合った日があった。 

海に落ちていく星を寝そべって眺めた夜があった。

誕生祝いのケーキを積んできて、海辺でお祝いした夜もあった。

大好きな人が奏でる音を海傍で一晩中聴いていたこともあった。

大好きな人を思って一人で泣いていたこともあった。

夕暮れの空の色に魅せられて、ひたすらシャッターを切っていた時間もあった。

 

沢山の出会いがあって、沢山の笑顔があった。

其処から生まれた恋もあった。

 

今、こうやって息をしている福島は、あの日を境に大きく変わってしまった。

時間が経過した今も、

何処にぶつけたらよいか分からない怒りやもどかしさで、

時折どうしたら良いのか分からなくなる。 

 

私たちの福島を返して欲しい。 

そんな風に叫びたくなる。

 

其れでも日常は続いていて、時間は待ってくれない。

変わらないのは、想い出。

私たちの心の中にあるもの。

想い出や思いは、私の中にある。

其れは誰にも邪魔されないし、壊されない。 

 

壊されてたまるものか。

 

大好きな小名浜。

大好きな福島。

 

2011.8.26 up

profile  hzk(ひづき)

福島在住。休日フォトグラファー。ときどき釣り人。

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