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FEATURE

カローラから考えるローカル

posted on 2012.5.20(sun)


 

トヨタが新型「カローラ」の発表に合わせて実施している「ニッポンコレカラプロジェクト」。すでにHEADLINEで、弊誌編集長の小松理虔が参加することをお知らせした。プロジェクトのカギを握るのは「ローカル」。トヨタ自動車という日本最大級の企業の目をローカルに向けさせたものとはいったいなんなのか。プロジェクトの仕掛人、トヨタマーケティングジャパンの2人に話を聞いた。

 

―地方の多様性を応援するプロジェクト

 

全国29の地域から選ばれた「コレカラパーソン」。ご当地アイドルあり、美少女作家あり、はたまた農家や生産者、音楽家ありと、そのラインナップはとても幅広い。「パーソン自身に魅力があるかどうかが最大のポイントですが、なにより、1つの価値に縛られない、さまざまな生き方や価値観を届けられるプロジェクトにしたかったんです」と、トヨタマーケティングジャパンの細谷聡さんは選定の狙いついて語る。

 

プロジェクトの柱は、ローカルテレビ局とのコラボレーション。各局とも番組内で積極的にパーソンを紹介するなど盛り上げを演出していることもあり、それぞれの域内で大きな反響を呼んでいるようだ。「マスの世界で中央から言葉を発すると、伝え方がどうしても画一的になってしまい、それぞれ特色のある地方にはなかなか浸透していきません。そこで、地方に根ざした活動を行っているパーソンを応援することで、その方たちが伝道師の役割を担ってくれるのではないかと考えました。地元のテレビ局も巻き込んでの壮大なプロジェクトになり、反響の大きさに驚いています」(細谷)

 

「地方から日本を元気にする」と一口に言うと、「地域振興」や「まちづくり」といった言葉を想像しがちだ。しかし、パーソンたちが自ら語る言葉は、みな自然体で、お題目めいたものはほとんどない。そうした既成概念を超える、自然な楽しさや可能性が溢れているのだ。それがまさに、コレカラパーソンに求められる資質なのかもしれない。「なにもない」と呼ばれてしまう田舎町で、それぞれが何かを生み出し、アクティブにその町での生活を楽しんでいる姿は、視聴者の心を大きく打つ。

 

「プロジェクトを進めてきて、さまざまな考え方に触れることができたことは、大きな収穫になりました。皆さんの生き方や考え方は、東京にいるとわからないことだらけで、正直、目が開かれる思いがしました」。そう語るのは、細谷さんと企画に携わったトヨタマーケティングジャパンの市川浩一さん。今回のプロジェクトは、「東京中心」だった価値観に一石を投じる大きなパワーを秘めているようだ。

 

記者会見に臨んだコレカラパーソン。下段は細谷聡さん(右)と市川浩一さん(左)
記者会見に臨んだコレカラパーソン。下段は細谷聡さん(右)と市川浩一さん(左)
piece for peace HIROSHIMA応援団(広島県代表)のアイドルユニットKOD
piece for peace HIROSHIMA応援団(広島県代表)のアイドルユニットKOD

 

―カローラとローカルの関係

 

トヨタが新カローラの展開にあたって「ローカル」に着目したのは、“あなたのまちのカローラ店” というキャッチコピーで知られる販売チャネル「カローラ店」の存在があるからだ。「カローラ店の展開は全国津々浦々にまで及んでおり、オーナー様からさまざまな要望や意見を吸い上げてきました。そこでわかったのは、同じカローラという車でも、乗り方、楽しみ方は違うということでした。山には山の、雪国には雪国の、港町には港町の、それぞれの暮らしに密着した、それぞれのカローラがあるんです」。(細谷)

 

高級車だと、そのブランドイメージが強いため、よくも悪くもその車のイメージにあうような乗り方になることが多いのではないだろうか。一方で、カローラという車は「大衆車」だからこそ全国に広がり、その人が乗りたいような、あるいはそれぞれの地方にあうスタイルで愛されてきた。東京という都市から発せられる “マス” のメッセージでは、カローラの魅力を伝えきることはたしかに難しい部分もあるだろう。地方ぬきにクルマが語られてきたことへの反省も、今回のプロジェクトを生んだ背景にあるのかもしれない。

 

「世界市場から考えれば、日本は「ローカル」ですよね。実はカローラには、グローバルカローラと日本仕様のカローラがあるんです。道路事情や生活習慣によって車幅や仕様もそれぞれ違っています。日本を「ローカル」として考え、「日本で乗るのにいい車」を作ることこそが歴代のカローラの命題でした。それは、日本国内にあてはめれば「地方で乗るのにいい車」を考えることにつながります。カローラという車は、「ローカル」の考え方にとてもフィットする車なのだと改めて気づかされました」(市川)

 

29の地域から選ばれたコレカラパーソンたち。それぞれが、それぞれの地域を楽しんでいる。 ▶写真をクリックするとサイトへ。
29の地域から選ばれたコレカラパーソンたち。それぞれが、それぞれの地域を楽しんでいる。 ▶写真をクリックするとサイトへ。

 

―コレカラのカローラ、コレカラのローカル 

 

地方で活躍するコレカラパーソン。彼らが発するのは、「その地方だからこそ楽しいスタイル」。そのメッセージは、カローラとも合致する。自由度が高く、乗り手のライフスタイルが反映されやすいカローラも「地方だからこそ」輝きを放つクルマだからだ。「一見するとあまり特徴のない車だと感じてしまう方も多いかもしれませんが、裏を返せば、自分だけの色を表現していける車とも言えるかもしれませんね」と細谷さん。地方も、カローラも、実は余白だらけなのかもしれない。

 

初代カローラの発売から46年。半世紀近く、日本人の生活を支えてきたカローラが、今、原点とも言える「ローカル」に再び注目し始めている。それは、地方にこそ、日本を揺り動かすエネルギーの源泉があるということを、トヨタ自身が知っているからだろう。ただの販促キャンペーンに終わらせず、日本の文化史に残るような「地方再考」の契機にするためには、私たち地方に住む人間の「創造性」も欠かせない。

 

面白い地元も、楽しい車も、カギを握るのは自分自身のスタイル。他から与えられた価値ではなく、自ら価値を作り出していくこと。それが、地方を楽しむために欠かせない考え方だ。問われているのは自分のクリエイティビティ。そこにはなにもないと考えるか。無限の楽しみ方があると考えるか。まさに自分次第である。

 

information

トヨタカローラ  ニッポンコレカラプロジェクト

http://www.corolla-korekara.com/

 

text & photo by Riken KOMATSU

 

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